仕様書を理解していない技術者

皆さんは、自分が仕様書を本当に理解しているか自分自身に問いかけをしているだろうか。

先日、私はある仕様書について担当者に質問をした。その仕様書は酷く曖昧で一目ではとても理解できない内容だったからだ。するとその担当者は「これは〜という意味ですよ。こんな簡単なことも分からないのですか?」と嫌味たっぷりに教えてくれた。だが彼の説明では全く理解できなかった。

そこで今度は「先程、貴方が言ったのはこのような意味ですか?」と具体例を示し、ついでに表と図も提示して質問してみた。すると彼はようやくその仕様書が曖昧であることを理解し、彼自身もその仕様書を理解していないことに気付いたのだ。そして黙ってしまった。それから暫くして

「うーん、この文書は曖昧ですね。これじゃ分からない。一体誰が書いたんでしょう。それにしても、よくもまぁこんな酷い文書を今まで誰も指摘しなかったものです」

と、被害者面をしてこう言ったのである。「こんな簡単な事も分からないのか」と言った舌の根も乾かぬうちに放った台詞がこれである。私は呆れた。恐らく彼は数分前に自分が言った台詞など覚えていないに違いない。

残念ながらこのような御仁は業界にはごまんといる。だが彼等を我々は笑えるだろうか?

これは他人事ではない。我々はいつ彼等に会うかもしれない。いや、それならまだましだ。もしかすると我々自身が加害者になるかもしれないのである。