ドメインについて(4)

ドメイン分析を開始するにあたってドメイン辞書の作成、つまり語彙の収集を始めなければならない。

語彙は「解釈」と「関連」を持つ。そして語彙は一度定義すれば完了というものではない。改良され続ける事になる。

「意味」ではなく「解釈」としているのはシステム開発はチームによる協業である故である。一人しか開発者がいないのであれば「意味」でもよい。だがチームの場合、人により解釈が異なることがままある。ドメイン辞書には最初にその語彙を定義した者の「解釈」が記述されるが、別の者の「解釈」がより適切となればその定義に変更となることもある。

ドメイン辞書の作成とはアプリケーションドメインの語彙の文書化である。作成の目的は次のようなものである。

共通性分析ではドメイン辞書を作成する事から始める。ドメイン辞書にはそのアプリケーションの領域の語彙を文書化する。このようにする意図はこれから解決しようとする問題に絡む全ての側面を把握することだ。またそれと同時にソリューションの全ての側面も可能な限り把握するためである。問題を広く深く理解する前に顧客の言葉や要求を記述する文書の中から問題を一瞥するのである。また自分自身の経験もここで役立つだろう。このようなものを「ドメイン語彙」または「ドメイン辞書」と呼んでいる。これは古くからあるソフトウェア設計ツールの1つであるが現代の設計手法の中で再認識され始めている。

ドメイン辞書はその問題領域に於ける技術用語のカタログであり設計者はこのカタログに記載されている用語を使って作業を始める。ドメイン辞書は構造化設計技法をサポートするためのデータ辞書とは別物である。問題に初めてアプローチする時設計者が直面するのは目の前胃にあるニーズである。ソフトウェ開発の作業の大部分は明示された問題により発生する。そしてそのような問題は顧客自身の問題である。このようなニーズの性質からアプリケーションはその顧客の問題に特化したものになる。

「マルチパラダイムデザイン」より