鬼平にみる営業の苦悩

鬼平犯科帳に「盗賊二筋道」という話がある。

あらすじはこうだ。

高萩の捨五郎という盗人が子供を助けようとして侍に切られてしまう。捨五郎は怪我を理由に盗みの手助けという仕事を断るのだが、それを逆恨みされ、口合人の寺尾の治兵衛と共に命を狙われてしまう。捨五郎は治兵衛を助けようとして命が狙われているから逃げろと云うのだが、治兵衛は逆に捨五郎に、本当はこんな汚い仕事は断りたかったのだが浮世の義理で断りきれなかった、すまなかったと詫びる。

口合人は今で云えば仲介の営業マンである。その口合人が今回の仕事は義理で断り切れなかったと云う。治兵衛が如何に義理を大切にしているかがわかる。義理とは仕事の大切な道具なのだ。然しそれによる苦悩もある。

現代に於いても、この義理人情があるからこそ仕事になるというのは変わらない。また、その苦悩も変わらない。これが日本流の営業なのだ。

義理人情とは如何にも日本的な営業指針である。